あなたはヒョウタンの子
ミカンでもリンゴでも丸、球体なら自然だ。わかりやすい。ヒョウタンは球が連なってるから、何かの間違い・きまぐれに感じる。
「総領の甚六」って言葉があるでしょ? 世間知らず・ぼんやり・おっとり。のっそりヒョウタンは、「総領の甚六」育ちに見える。
タヌキが腰にぶら下げたり、居酒屋の軒先にひっそりあったり。
日本のシンボルと思っていたら、グローバル植物だった。
「ヒョウタン美術館」牛若丸刊。文庫より小さく、背と肩を丸めて読みたくなるサイズの本。
著者は、港千尋さん。映像人類学者と肩書きにあった。写真家でもある。多摩美の先生。映像人類学って、なんだろう?
太古から、容器だった。そういえば、なんとなく万能容器。
割って使えばお椀やスプーンになる。アフリカの人類原風景が浮かぶ。
漁師は、浮きに使った。ポリネシアとか南米の古代。
そして楽器。音が共鳴することを、人類は初めて知った。ガラガラにも使われた。
どれも、中身を食べたという記録が無い不思議植物。
古今東西のヒョウタンを訪ね、石器時代Stone Ageから瓢器時代Gourd Ageへ誘う。本文の半分は、英語。
Welcome to the wonderful world of gourds!
書画や文学にも登場する。あの「くびれ」が、想像を刺激するのだ。
狭い門を通過した先にある閉じられた空間には・・・・。地下世界・別天地・桃源郷・理想郷。壺中天。
飲んでも飲んでも尽きない酒壺は、枯れない水源のイメージに近づく。
港千尋さんの結語、
・人は石の子ではない。ヒョウタンの子である。
なら、付録のヒョウタン本リストに手を出さなきゃ。
・「ひょうたん漫遊録」中野美代子著
・「一つ目小僧と瓢箪」飯島吉晴著
・「ヴォイドへの旅」港千尋著
・「『瓢鯰図』の謎」芳澤勝弘著
★旅する目玉 港千尋さんの写真