充分耕した話芸を聞きたい

浅草の伝法院通りの空を彩る街路灯は、行灯(あんどん)になってる。

地口(じぐち)行灯。ダジャレの言葉遊びが10本ほど並んでいる。

・わらう顔には ふぐきたる ← 笑う門には 福来たる
※フグを見て笑うかみさんの絵付き

・板きりむすめ ← 舌切り雀
※娘さんが板をノコギリで切っている絵付き

・はねがはたきの 世の中じゃ ← 金がかたきの世の中
※羽はたきを3本下げてウットリする若旦那の絵付き

無邪気で、日本コントの始まりは地口行灯なんじゃないかと、毎度見るたびに声に出して読む。

「江戸時代落語家列伝」新典社刊。

文楽志ん生、円生。3人は明治生まれの昭和大名人。戦後70年に至る落語の源流だ。

本を読めば、明治時代まではさかのぼれる。話芸や演芸の本をよく読んだ。読んでなかったのは、それ以前。

寛永というから徳川家光時代。僧侶・安楽庵策伝は、京都所司代に笑い話を集めた本「醒睡笑」八巻を献上した。

これで、策伝さんが元祖ということになった。と、山東京伝が文化元年「近世奇跡考」の本に書いた。

それから上方・江戸落語の流れを、演者を筋に解説している。

足跡をどのようにたどったかといえば、巻末にある「主要参考文献」リストだ。江戸期の落語史料がこんなにあるとは。

それも、ほとんどが翻刻されているから読める。ありがたい。

演目、評伝、名所、戯作、芸能、名人、草双紙、図絵。舌耕文芸とは、いかにもこなれた話芸のニュアンスだ。

・とんでゆに入る 夏のぶし ← 飛んで火に入る夏の虫
※裸の武士が、刀を身につけて湯船に飛び込む絵付き

浅草寺の伝法院で、江戸時代の寄席芸が見たい。

★旅する目玉 清水寿久さんのイラスト

♪旅する鼓膜 矢沢永吉×布袋寅泰 「もうひとりの俺 」