考え事が好きな万里さん

サッカーなでしこが優勝した4年前、敬愛する米原万里さんの展覧会を見に鎌倉文学館を訪ねた。

駒場加賀藩・旧前田侯爵邸が残っているのは、自邸。鎌倉文学館は別邸だった屋敷。ともに古建築。

ミュージアムショップで、彼女の本を4〜5冊購入した。

するとこの本は、4年間積ん読くしていたことになる。「発明マニア」文春文庫刊。

遺作か、遺作に近い本。2003〜06年まで週刊誌連載エッセイをまとめた本。

生活から国際政治まで、老若男女からどうでもいいことまで、課題解決の方法・アイデア・手本・薬・裏技・体制・魔法・バージョン・装置・器具・製品・計画をずらり119並べた。

ほんとに愛すべき人。

なんでも凝って夢中になる。十代では、ひたすら紙に家の間取り図を書いていたらしい。その趣味なんかは生涯続く。

といって、建築家を目指したわけではない。頭の中は「こういう間取りで、家族皆んなで暮らしたい」パターンが、100も200もあったということなのだろう。

邪気の無いところが、愛くるしい。

いっぽう、せこい発明を装って小泉首相時代の政治に痛罵を浴びせる。

生を急ぐように、とはこのこと。

我が寿命を察して、「めくるめく」「走馬灯のように」「振り返れば夢」と、安っぽい男衆専売特許のまとめ方は最後までしなかった。

解説文は、佐藤優が引き受けた。

例の、上目遣いの男。「私だけが知っている」という唯我独尊なギョロ目。生前、万里さんと親交があったとは意外だった。

毎月のように出す新刊は、彼女への回答のつもりなのかもしれない。もっと、万里の稚気を真似てほしいぜ。