日本文学の大地 中沢新一

中沢新一さんが、古典を読んでいたとは意外だった。

なんたって「森のバロック」ですよ。これしか知らず、しかも読んでないけど。

プロフィールを読むと、以外に「古代から来た未来人 折口信夫」「チベットモーツアルト」「はじまりのレーニン」とあった。

日本世界をまたにかけて古典を精読していたのだ。

宗教・哲学・芸術・科学に及ぶ思想家にして人類学者なのである。領域横断はおもしろい。

小学館が「新編 日本古典文学全集」を刊行するにあたり、月報の原稿を依頼した。

・ただし、今までの国文学の先生がたが絶対書かないような斬新な解説でなければだめです。

それは、彼にも願ったりかなったり。

何のはずみか、20年前の解説原稿をまとめたのが「日本文学の大地」KADOKAWA刊。

1.源氏物語から、19.謡曲 江口までオール未読。

それぞれ、3部構成になっている。概要と、中沢新一解説文と、最後に原文の一部と現代語訳。

近代文学以前の日本古典の最大特徴は、自然と文化が未分離だった。明治以降は、大分割されたという。

肝心の解説文。

4. 歎異抄  大地に知を棄てる
6. 松尾芭蕉 人間の底を踏み抜く
9. 蜻蛉日記 リビドーの裏地に描かれた女性文学
12.井原西鶴 恋する換喩

意味ありげでしょ? 読んだが半分も理解できたかどうか。

国文学の先生がたは、資料を歩いて実証検分することに熱心。

思想家・人類学者は、古典文学を読んで思考を足取る。

思えば「森のバロック」というロジックは、自然と文化の未分離状態を語っているのか?