それから 夏目漱石

朝日新聞連載小説の再録「それから」が4月から始まった。

過去「こころ」「三四郎」の評判よろしく、漱石シリーズ第3弾。

三四郎の、その後の物語だから「それから」というタイトルだといわれている。大学を卒業しても就職せず、一戸をかまえるも親の金で暮らす。当時の流行言葉で高等遊民と呼ばれた男が主人公。

名を大助という。

大助は独身なのに、門野という食客を置いている。他人の家に寄食する男。書生でもある。居候ともいう。

落語に出てくる居候は、だいたい夫婦世帯にいる。夫が何かの義理か縁で引き取り、かみさんは「早くどっかへ消えてほしい」と常にイラッとしてる。

無為徒食だから。食っちゃ寝、食っちゃ寝で財布を圧迫するばかりで、掃除ひとつやらない。

大助の門野分析。

・この青年の頭は、牛の脳味噌で一杯詰っているとしか考えられないのである。

・論理の地盤を竪(たて)に切り下げた坑道などへは、てんから足も踏み込めない。

落語が好きだった漱石の趣味が出てる。ヨタローの居候が念頭にある。

その門野は住み込みの婆さんとすこぶる仲がいい、と好意的に書く。

門野は、世間知らず。婆さんは、達観者。2人は、これから始まるこんがらがった物語に「シンプル思考」を注入するのだろうか。

同一紙面に連載中の小説は、沢木耕太郎さんの「春に散る」。

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