沈黙の春 レイチェル・カーソン

前に横浜図書館で「ブルー・カーボン」の話を聞きに出掛けた。

ブルー・カーボンとは、新聞の片隅の、さらに片隅で報道されるようなネタ。水棲植物がCo2を吸収して光合成をする話。

樹木のグリーン・カーボンに対して、ブルーということ。

講演席の後ろの壁には、関連図書が10mも並んでいた。やることが律儀な啓蒙姿勢。

ほとんど敷居が高い本だった。取りつく島がないほど理系。

そこで見つけたのがレイチェル・カーソン。女優のような名前に、ナンパのつもりで手にした。僕はちゃらいのだ。

沈黙の春新潮文庫刊。

アメリカの奥深くわけ入ったところに、ある町があった。

その町は自然と一体だった。田んぼがあり、穀物畑があり、丘があり、果樹もしげる。春に白い花がたなびき、秋に紅葉が織りなす。

渡り鳥は洪水のように、あとからあとから押し寄せては飛び去る。

ところがある時から、若鶏は原因不明の病気にかかり、牛や羊も死んだ。そのうち、突然死ぬ人もでてきた。何が原因かわからない。

薄気味悪い「沈黙の春」。

レイチェルは農場主の娘。動物や海洋生物を研究した。1951年、「われらをめぐる海」でジャーナリトデビュー。

沈黙の春」は、空から地底から川から、土壌で樹木で山岳での自然破壊に警告を鳴らした本だった。時に1962年。

半世紀前というのも、我が不明を詰問されているよう。

そういえば水俣病を世に問うた「苦界浄土」の石牟礼道子さんも、若い頃はとびきりかわいい人だった。