くりかえすけど 田中小実昌

いろいろな雑誌に書いてきた原稿をまとめて1冊にすることは、よくある。

小説の場合は、代表作とか話題作がタイトルになる。エッセイでは、改めてのタイトルが付けられる。

「くりかえすけど」幻戯書房刊。

田中小実昌(こみまさ)、こみさんの本。短篇アンソロジー。ただし「くりかえすけど」という小説は無い。もっとも、エッセイ集とも読めるのだが。

戦後70年を期して、幻戯書房は「銀河叢書」を刊行した。「戦争を知っていた作家たち」を主なテーマにしたシリーズ。

第1回配本が「くりかえすけど」。

今までの単著に収録されてない原稿を集めた1冊。内容は従来と変わりない。

昼はバスに乗る。夜は飲む。

外国へ足を延ばして、これほど外国を感じさせない文章はめずらしい。どこにいても一緒。戦時でも平和でも同じ。

これの繰り返し。文章も、同じことを繰り返して書く。そして僕も、繰り返して読んできたうえに、また読む。

習慣だ。

末尾、解説のかわりに「祖父のあれこれ」を孫の田中開さんが書く。

・編集者の方とゴールデン街で飲むこともある。そんな日はさっさと切り上げる。編集者はタクシーまで送る。でもタクシーは新宿を一周して、また祖父は店に戻って来てしまう。

できる?