夜想曲集 カズオ・イシグロ
本屋の店先で大々的に売り出してた。
「忘れられた巨人」カズオ・イシグロ著
・「わたしを離さないで」から10年。ブッカー賞作家が満を持して放つ新作長編。
・著者来日。
偶然だ。
長崎生まれ、イギリス育ち。ミュージシャン → ソーシャルワーカー → 作家。「遠い山なみの光」でデビューし、王立文学協会賞を受賞。「日の名残り」でブッカー賞。
才能は、文学の地下水に流れていた。
このノクターン短編集は、自身がミュージシャン経験がなければ書けなかったであろう。
音楽の才能とか、音楽で飯を食うとか、音楽の晩年とかの物語。脚光を浴びるステージとは真逆の五つの物語。
と同時に夕暮れをめぐる五つの物語でもある。もちろん夕景は、人生のたそがれの暗喩。叶えられず、愛は終わり、野心は挫折する。
訳者あとがきによれば、彼はチェーホフに影響を受けたそうだ。この前、チェーホフの短編集を読んだばかり。
僕の印象では、朗読で聞いたことがあるウィリアム・サローヤンの日常描写に似てると感じた。
哀歓って言葉があるね。90%くらいが哀で、歓は10%ほど。カズオ・イシグロが経験したソーシャルワーカーのパーセンテイジだろうか。