有頂天家族 森見登美彦
毎年夏になると、京都・糺の森にある下鴨神社で古本展が開かれる。
参道の両脇に、全国の古本屋が出張して並ぶ。店主と親しくなり、出直して岡山・広島・大阪・新潟・長野・群馬の店を訪ねたこともある。
糺の森だったから行った。「ただすのもり」と読む。いかにも京都で古本買う実感があった。これ「美しが丘」や「緑パークタウン」だったら、わざわざ新幹線で行かない。
・糺の森に住む狸の名門・下鴨家の父・総一郎はある日、鍋にされ、あっけなくこの世を去ってしまった。
広告コピーを読んだ。
森見登美彦さんは奈良生まれで、大学は京都。バリバリ関西の民話ファンタジーはお手のものだろう。
父亡き後、残された狸4兄弟と母。宿敵の夷川(えびすがわ)一族の頭目は父の弟。争う従兄弟の名は金閣・銀閣。
読みたくなるでしょ?
それに、すっかり落ちぶれた天狗の赤玉先生も登場。出町商店街の裏手にあるアパート「コーポ桝形(ますがた)」に暮らす。
天狗好きの僕には、素通りできない。
かつて先生は狸たちに読み書きそろばん、化け方、弁論術など教えていた。今も歴史を語る。しかれども平家没落と応仁の乱と幕末がチャンポンで、神通力も失われて久しい。
理想の老い方だ。
狸と天狗に美女の弁天がからんで、三つどもえの化かしあい。こたえられないねぇ。
10年ひと昔前に出版されていた。第二部もあった。
・赤玉先生のご令息、大英帝国より堂々帰還。そして四兄弟を待ち受ける最大の試練とは?