人と「機械」をつなぐデザイン 佐倉統
「笑わないと開かない冷蔵庫」ってのは、どこかで売ってるのだろうか。
発想したのは歴本純一さん。コンピュータ人間学ってのを考えている。
便利を追いかけ機械を作った人間。効率や省略を達成し、これで我がモノグサ解題が解決したと思いきや、そうは問屋が卸さない。
端的な例が、ヘルスケアとかエクササイズと呼ばれるもの。便利になれば、身体は劣化する。
今度は不便、非効率に向かってトレーニングが始まる。
この身体に情動を加えて、表情を機械に取り込もうという研究をしているのが歴本純一さんだ。
・独居老人が増えるでしょ。他人とそれほど接しないので、表情の変化が出なくなるのではないかと思いました。
扉に電磁ロックが付いていて、前で笑わないと開かない。
ハッピーだから笑うのではなく、笑うからハッピーになれるのだ。
最初はとまどう。顔の表情筋を動かす。ちょっと声を出してみる。アクションも入れる。無理クリでも笑う。だんだんポジティブな気持ちになる。
「人と『機械』をつなぐデザイン」東京大学出版会刊。
オムロンはシンクタンクを持っている。その研究所が東大と共同研究した。
「笑わないと開かない冷蔵庫」以外にも、数々テーマがある。義足、ファブラボ、ロボット。
面倒なことを代替えした機械から、人間たらしめる機械が作られていくのか。