ぼくは思い出す ジョルジュ・ペレック

水声社は、カバーから「フィクションの楽しみ」とアピールする。

「ぼくは思い出す」は、1920年代の写真家、ウジェーヌ・アジェのセーヌ川写真で誘う。

「楽しみ」というより、「試み」の感あり。

ジョルジュ・ペレックは、ツイッターのような短文を480本並べた。

すべての冒頭は「ぼくは思い出す」で、あとに続くのは映画・音楽・演劇などのエンタメが半分以上。他に街角の景色、学校、遊び、文学。

歴史というのは政治史・戦争史で語られることが多いが、個人メモリーに毛ほども影響なし。

70年代のフランス人の回想は極私的だから、言われっぱなしだとつらいよ。

フランスでも昔の話が通じない読者のために、注釈本が出た。日本でなら、なおさら。

訳者の酒詰治男さんが、本文以上のボリュームで注釈を付けていたので助かった。風前のメモのような軽さがいい。

セルジュ・ゲンズブールには「ポルト・デ・リラ駅の切符切り」という歌がある。

・「まじめな雌牛」は、グロジャン社発売のプロセス・チーズの商品名。「笑う雌牛」社に訴えられて敗訴。

・新しい波ヌーベル・ヴァーグには2派あり。ゴダールトリュフォーは右岸派。ジャック・ドゥミアニエス・ヴァルダは左岸派。

・ナイロンNylonは、デュポン社開発の人口繊維。パラシュート用の絹の代替品だったことから、「お前たちの負けだ、老いぼれ日本人どもめ」の頭文字をとって命名したとの説あり。
Now You Lose, Old Nippons!

・ミジャヌー・バルドー。ブリジットの5歳年下の妹。映画界入りしたが、嫌気がさして引退。