欲しけりゃ、触りたくなるのが人情

図書館のDVDラックを見ていて、迷わず手を出しました。

「Of mice and men二十日鼠と人間」。

高校の英語の教科書に出てました。英語は苦手で苦手で、30行も訳せなくて放り出した記憶がよみがえる。

アメリカ・文学・スタインベック・農場。すべてが、自分の身の回りにない。カケラも縁がないので、知る必然性がない。

第一、タイトルの最初に、なぜOfが付くのかわからない。

諸々のイタイ思いでがあるので、どんな物語だったのか知りたくなったのです。

農場を渡り歩く2人の男。

子供の知能しかないレニーを、ジョン・マルコビッチが演じる。相棒のジョージは、ゲイリー・シニーズ(兼監督)。

相棒映画は数々あれど、ベスト10に入るでしょう。

「柔らかいものを、指でなでるのが好き」なレニー。二十日鼠をなでてるうちは、問題ない。

ところが、女が着ていた揺れるワンピースを触ったのがセクハラと誤解され、牧場を追われる場面から映画が始まる。

レニーのおかげで、いつも迷惑なジョージ。でも、2人は相棒。やっと、新しい牧場に働き口を見つける。

600ドルで買える牧場のために、黙々と働く。牛もヤギも飼う。ニワトリもウサギもいる。犬も猫もいる。

いつの日か、我が家と呼べる牧場を持つ2人の夢。



そこには、牧場主の息子と好きで結婚したわけでもない若妻がいた。

「彼女とは、話をしてはいけない」と、ジョージから釘をさされていたレニー。

ところが「柔らかいものを、指でなでるのが好き」なレニーは、つい彼女の髪をなでてしまう。子供の知能しかないので、悲劇がやってくる。

しかし、ほんとうの悲劇は、ここから始まる。

見終わって、改めてタイトルの意味を考える。

miceは、mouseの複数形。ミッキーマウスのマウス。二十日鼠の他に、臆病者・内気者。動詞には、あさり歩く・襲う・狩り出すの意味もある。

レニーは、確かに二十日鼠などのような小動物が好きだった。けれども、miceと複数形になっているところが肝心。

2人の相棒を指した言葉なのか? それとも事件を起こしたレニーを、殺気立って追いかける大勢の男たちのことだろうか?

そして、men。

これが2人の相棒の意味? それとも、大勢の男たちのこと?

いずれにしても、「二十日鼠と人間」という単純な字面からはうかがい知れない文学でした。

人の良さが、頭の良さとバランスしない深淵にひそむ闇。

これを高校生に理解しろって言うの? 味わえって言うの? 無理でしょう。

今、聴いているのは石井竜也兄さんの「Where is Heaven」。生誕100年「ジャクソン・ポロック展」のために作曲したそうです。

欲しいものって、触りたくなるよね。

大阪にある国立民族学博物館に、触って楽しむ常設展示が開始されたそうです。海図とか仮面とか。よくぞ、やってくれました。担当したのは、全盲広瀬浩二郎さん。

全盲じゃなくたって、触りたいよ。手のひらの触覚は、視覚より信頼できるもの。

これを機会に、全国の博物館は展示品を「お触りOK」にしてほしい。

二子玉川駅前にいた犬に、子供がグリングリン触りまくってました。手だけじゃなく、ほっぺたまでくっつける。僕も参加。

「尾っぽを触っても、肉球を触ってもいやがりません」。

白が美幸(みゆき)ちゃん。オールドイングリッシュシープドッグ。

茶が姫和(ひより)ちゃん。ゴールデンレトリバー

名前と犬種を教えてくれたのは、日本アニマルセラピー教会の人。立て看板を読む。いろいろな活動をやっている。

老人ホーム・養護施設・障害者施設・医療現場・リハビリ現場・教育現場をセラピー犬が訪問して、人間を元気づけているのです。

自分のペット犬を、セラピー犬に育てる活動もしている。

そのためには、教育・訓練しないといけない。人も犬も。お金も必要。だから、寄付を募る。しごくまっとうなので、僕も寄付しました。

レニーの闇を、ちょっと明るくする光になれるかもしれない。それくらい、映画のラストシーンはショックでした。