大戦間に喝采を浴びたワル
「オベラ座の怪人」は、エリックという名前。モーリス・ルブランが書いたのは、怪盗紳士アルセーヌ・ルパン。
怪人ジゴマとか、怪盗ロカンボールというのもいた。
日本には、怪人二十面相もいる。ごく最近では、ゴーストライターに嘘をばらされた怪人作曲家もいる。
尋常ならざる風体、特に目の回りがなんとなく薄暗くて正体を隠す。怪しさのイメージ。
ビジュアルイメージの正体を勉強するのが、表象文化論。
著者は、赤塚敬子さん。
シルクハットに燕尾服、目にマスクをしてパリの街を荒し回るファントマ。ベルエポックの時代、城館に押し入り殺人・強盗を繰り返す。
「誰でもない。しかし、誰かなのです」
「その誰かは、何をするのですか?」
「人々を恐怖におとしいれるのです」。
1911年2月、「ファントマ」第1巻が発売されるや、32巻までつづくベストセラーになった。サザエさん同様、「ファントマ」は歳をとらないのだ。
監禁・爆破。ペスト菌のネズミを放つ、礼拝堂の屋根をはがす、死体を壁に塗り込める。しかれども、捕まらない。
物語はスベストルとアランの合作だった。主人公の名前をどうしようか悩む2人。「そうだ、ファントムだから、ファントマにしよう。これは、いける」と、かなりイージー。
表紙画を描いたのは、イタリア人のスタラーチェ。
ストーリー展開も、新聞の三面記事を読みあさり、ガラガラポンで書きとばす。1ヶ月に400ページ。
正確には、吹き込み。録音されたものが、書きとられ、清書したものがそのまま印刷所へ直行する。
これが、当時のベンチャービジネスの映画になり、人々は「怪人」を見た。
どころか、シュルレアリストを刺激した。アポリネール、エルンスト、コクトー、マグリットたち。
メディアミックスやウォーホルの手法は、100年前からあったんだね。