赤ひげ 黒澤明
千代田図書館のAVブースは、両脇を曇りガラスで仕切ってある。
これは、あたりかまわず号泣するのに都合がいい。
3時間の大作「赤ひげ」鑑賞。
山本周五郎の原作は「赤ひげ診療譚」。小説は全体でどれほどのボリュームがあるのだろうか?
CD化された診療譚4枚を持っている。
・狂女の話 駆け込み訴え 徒労の賭ける 氷の下の芽
朗読は、すべて矢島正明さん。
診療譚とは別に、新潮社も周五郎ものをCD化している。日下武史、江守徹、佐藤慶、長山藍子さんたちが朗読。
黒澤明監督は、「赤ひげ診療譚」だけから材料を選んだのだろうか? シナリオを書くために、他も読んでいたはずだから、知らん間にチャンポンになったか?
もともと、周五郎作品には基調がある。
貧乏。
貧しさの諸相を描き、「なにもそこまで自分を追いつめなくてもいいではないか」という健気さ。
音楽が佐藤勝とあった。場面展開に効果あり。この人は、他の黒澤作品の常連かもしれない。
セバスチャン・サルガド 監督は息子
フランス映画祭2015で、「セバスチャン・サルガド」を見る。
サブタイトルが気に入らない。「地球へのラブレター」だって。口当たりを良くすりゃいい魂胆丸見え。
原題は「地の塩」。
青山学院大学が、よく「地の塩たれ」と言っているからキリスト教の言葉か? 聖書に出てくる?
塩は、栄養・養分・生命のシンボルで、転じて平和・友情・愛情の世界的記号でもある。
キリスト教義が持ち出されると、この世の地獄・煉獄が前提にありそうな・・・。
サルガドの写真は、ジャンルで区分けできない。報道であり、民俗であり、人類であり、虐殺であり、貧困であり、労働であり、生命である。
それが、まるでモード写真である驚異。
どんな人かと思うだろ? 本人とかみさんを、日本写真芸術専門学校で見た。
今回は、息子のジュリアーノが来日して上映後に登壇した。
ヴェンダースと2人で監督をした話。写真撮影中の父は集中して声をかけられない話。
そして、ギクシャクしていた父子の関係が、この映画制作で和解した話。
貧困、飢餓、難民、内戦を見過ぎたセバスチャン・サルガドは、体が変調し、故郷にもどる。
「Sebastião Salgado.Genesis」TASCHEN刊。ジェネシス・創世紀というプロジェクトが、そのまま写真集になった。
SAPEURS(サプール) コンゴ
・ところで唐突ですが、コンゴ共和国の「Sapeurs(サプール)」知ってますか?
クリエイティブ友だち「クリだっち」から来た動画がこれ。
http://matome.naver.jp/odai/2138733022223249801
彼はファッションの仕事をしているから、こういう事情通の動画を送ってくれる。おもしろいねぇ。
フランス60年代をイメージしたファッションなのだという。コンゴはフランスの植民地だったから。
コンゴって、ベルギー領じゃなかった? フランスなの?
Sapeursたちの体格と皮膚の色で、まずモデルの条件をクリア。住んでる場所をロケ地と考えれば、これでファッション写真のすべてを満たす。
普段は、ただのコンゴ人。休日のみSapeursに変身ってとこが、いかにも地元密着ファッショニスタで可笑しい。
「SAPEURS(サプール)」青幻舎刊は、すでに3刷というから、気になってる人が多いんだな。
NHK「地球イチバン」で放映されたらしい。
「クリだっち」とは7月下旬に鰻でも食べるつもりだ。またそこで、新しいネタを聞くのが楽しみだ。
決勝リターンズ なでしこ
7月2日、女子W杯準決勝でなでしこ勝利。4年前をまざまざと思い出す。
もう、あれから4年。
イングランドのDFバセットのオウンゴールは、一瞬わからなかった。大儀見がシュートをはずし、「延長かぁ」と思っていた矢先の再現映像。
グループリーグから毎回、決定弾を入れる選手が違っていた。相手のオウンゴールという、まさかの手を呼び込んだなでしこだった。
のりお監督は、ついてる男だ。
「親父ギャグが、ちょっとダンディになった」と言われているらしい。ダンディに進化しないでほしい。なでしこ達に、鼻でせせら笑われる純正親父に戻ってほしい。
4年前は、PK戦前に監督は笑ってた。これでアメリカに勝てると直感した。
ところで、今までのベストショットは準々決勝の岩渕ゴール写真。
彼女は小さい。他の選手の肩くらいの背丈。
これがフィニッシュを決めた。本人はピッチをダッシュしたかったろう。ところが、ゴール前に詰めていた皆んなから抱きしめられる。
大儀見が首を羽交い締めするので、岩渕は四股を踏む金太郎ポーズになる。そこに、熊谷が重ねて両腕を拡げる。つまり、構図は
ぬいぐるみを抱く人を、抱く。
さらに左から岩清水が、3人を抱くポーズ。
さて、決勝。
骨折した安藤は帰国してたが、バングーバーに向かうらしい。白熊ぬいぐるみが代理でベンチに坐っていた。とうとう本人が合流することになった。
今年の女子バロンドールは、キャプテン宮間が選ばれるだろう。ただもんじゃない。
下山事件 森達也
神戸の連続児童殺傷事件の犯人は、現在32歳になっていた。
当時14歳だった。14歳だから衝撃だった。32歳だと、何をやっても凡庸だ。ねむい。
「挽歌」太田出版刊をめぐる、やりとり。
森達也さんの意見。
・被害者が手記を出版されたくないのは当然。
・一方、本を回収すべきだというのには違和感がある。
感情は大事。言論や表現も大切。
・遺族の了承をとるほうがよかった。
でも、そうすべきだったとは思えない。出版の条件にするべきではない。経験や感情がブラックボックス化するから。
かつて、オウム真理教のドキュメンタリー「A」を発表した
森達也さん。
ブラックボックス化させないためには、基本的に自由にさせないといけない。ところが、結果として被害者を加害することになる。
表現とは、加害者になること。
「下山事件」新潮文庫刊。日本が占領下にあった時代のミステリー。
小さな事実を発見するも、謎解きをやっているのではない。
テレビの企画として、雑誌の連載として、自主映画として事件を取り上げようとした。
関わった人々は、それぞれが本を出した。読んではいなが、謎解き本でしょう。
森さんのは、メディア論なのだ。そこが下山事件を今日出版する意味にしている。
Life on the border 渋谷映画祭
シブヤ大学で、来年4月に渋谷映画祭をやろうとしている。
どうなることやら。
テレビで「僕ら難民キャンプが撮影所」を見た。
トルコ、シリア、イラク、イランで、ISに追われ難民となりUNHCRキャンプで過ごす人々。子どもたちも多い。
そこで、1人のクルド人監督が考えた。子どもたちが監督になって、映画を撮るとどうなるのだろう、と。
技術は、監督の仲間が教えた。1人5〜10分の映画作りを追いかけるメイキングフィルムだった。
2時間、どんどん苦しくなっていく。
撮影するためにロケハンしないといけない。かつての我が家に行ってみた。破壊されて、跡形もない。
手の無い女の子がいる。「映画を撮ろうと思っているんだけど、手伝ってくれる?」と、友だちを尋ねる。
全身火傷を負った親父と、顔に火傷傷が残る少年。親父のためにキャンプを歩いてメガネを探す。だれも貸してくれない。
子どもたちの映画は、Life on the borderというタイトルで公開されるらしい。
渋谷映画祭では、こういう映画を上映したい。子どもを招き、留学させるアイデアはどうか。
UNHCRの中東・北アフリカ局長が来日して、政府に難民受け入れを求めた。
「日本では『国民が慎重』だから難しい」と応えたらしい。おい、ぜんぜん国民は慎重じゃないよ。
公務員がさぼりたいんだろ。
建仁寺襖絵 鳥羽美花
引き続き、テレビの話題。
染色画家・鳥羽美花さんは、京都・建仁寺の襖絵を制作した。まず小書院の16面。これから大書院も手掛けるのだという。
寺社の建具をまかされる基準は何か?
もちろん実力がある、ということである。建仁寺小書院を飾るのは、ベトナムの湖の風景。
まず、デッサン。型染めだから、型紙を切り抜いていく。糊を乗せる。絹張りをする。表具に仕立てる。引き手は、七宝だ。
やっと1枚の襖が完成。枠の木部をかんなで調整して、やっと敷居を滑るようになった。
工程はおもしろい。もっと気になったのは、美貌。
京都に鳥羽美花あるならば、東京に松井冬子あり。美し過ぎる日本画家。
花鳥風月を描いてチヤホヤされるような、ヤワじゃない。
東京芸術大学へ提出し博士論文は、「知覚神経としての視覚によって覚醒される痛覚の不可避」。幽霊や内臓を描く。
美人は、どのように生まれるか?
獅子身中の虫がいるからだろう、とにらんでる。禅僧は虫が好き。