文字を音に翻訳するために

これ、ICレコーダーなのだ。録音機。

スマホで何でもできちゃうから、録音しかできない物を持つ人は、ほとんどいないでしょう。

5日から始まった「音訳養成講座」で、借りる。

「音訳」って、聞いたこと無いでしょ? 音に翻訳すること。朗読ではない、読み聞かせでもない。もちろん、一人芝居の話法とも違う。

目が正常の人・正眼者が、視覚障害者に話して伝えるのが「音訳」。この道40年の磯辺誠子さんが、初回からビッシッとビシバシと講義を進める。

まず、取り上げる読み物。

新聞・雑誌・DM・チラシ・ハガキ・取り扱い説明書・報告書・伝票。生活上不可欠のあらゆる文字を対象にするってこと。

小説は一部なんだ。朗読のように「表現」で読んだら、聞くほうは疲れる。なるほど。

メディアが広いということは、使われる文字も広いということになる。

翻訳という意味がわかった。

日本語 ←→ 外国語と同様に、日本文字 ←→ 日本音声。たちまち大変さが理解できる。通常の黙読が、どれだけいい加減か。

新語が毎日産まれるだけじゃない。正しい漢字の読み方、自信が無い。固有名詞は正しく読めないほうが圧倒的に多いだろう。専門用語・業界用語もある。

それに、アクセント。世の中には「新明解日本語アクセント辞典」三省堂出版なるものもある。

音声ということでいえば、流れの間(ま)。加えて、意味に合ったイントネーション。ピークのつけかた、ピッチの変化。

聞く人が負担・不快・散漫・苦労・緊張しないように、読み手は「仲介者」に徹する。ますます、文字の翻訳者に近づいてきた。

驚いたのは、ビジュアルも「訳す」こと。図表・グラフ・写真・絵画・イラスト他なんでもかんでも、「音訳者」は原稿化して読まなければいけない。

そして、録音技術。音声資料として貸し出されるので、CD製作に習熟しないといけない。

文字校正ならぬ、音校正もする。あらゆる場面で、ICレコーダーは必需品なのだ。

練習れんしゅう、また練習。

伊福部昭 SF交響ファンタジー第1番